小さく建てて大きく使う。

  • by 今泉 太爾
  • 3 Years ago

小さいことはいいことだ。

低燃費住宅にしたいのならば、建物は小さくしたほうが良いでしょう。特に住宅の外壁表面積は可能な限り少なくしたいものです。

なぜなら外壁表面積が大きいと、「光熱費」と「施工費」そして「維持費」が割高になるからです。屋根や外壁は紫外線や雨風などの自然の驚異に対抗する為に、防水性・耐久性の高い材料を使う必要があります。そして、屋根や外壁などの表面積が大きいほど、室内の温度や湿度に大きく影響してしまいます。この冬の寒さや夏の暑さなどの外気温の影響を、出来るだけ小さくするためには断熱性能も高めないといけません。

また外壁は自然の驚異に対抗する為に、防水性・耐久性の高い材料を使う必要があります。つまり、外壁表面積が大きくなるにつれて、防水性、耐久性、断熱性など建築コストのかかる部分が増えていきます。光熱費というランニングコスト面からだけでなく、出来るだけ外周面積は少ないほうが初期投資、維持管理といった建築コストの面から考えてもお得です。

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でこぼこした家は、燃費が悪く、初期コスト・メンテコストも高い

では最も外壁表面積を小さくするにはどうしたらようでしょか? 理論的には「球体(ドーム型)の家」です。確かに理屈では球体が最も表面積が小さいのですが、角の無い家は家具をどう置くか悩んでしまいそう。実際作る方も大変ですし、使い勝手を考えると、四角い家がいいですよね。であれば同じ床面積ならば、出来るだけ表面積が小さくなる正方形か、正方形に近い長方形の家が良いということになります。

 

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△同じ床面積ならば、いびつな形になる程表面積が増える。

 

断熱が悪い家だと、夏・冬の実質利用可能面積は小さくなる。

断熱をケチってまで無理に大きな家を建てても、光熱費がかさむためあまり使わない部屋の空調を消して暖冷房する場所を減らすことが多くなりがち。つまり、夏冬に有効面積が小さきなり、結局つかわずに物置になる部屋が増える場合が多くなります。無理して大きく造った家は、小さい家と大きな物置を作っているようなものです。したがって、なるべく屋根や外壁、特に一番大きな外壁の表面積を小さくしてしっかりと断熱することで、一年中全部の部屋を使える小さな家にした方が「小さく造って大きく使う家」です。

例えば家を大きくしたいがために、断熱を削り、外壁をサイディングに変更して耐久グレードを下げ、30坪から33坪に増加させたとします。パッと見は6畳のお部屋が一つ増えます。しかし、現実には断熱を削って増やした一部屋の分だけ冷暖房の光熱費が増加します。光熱費を抑えるために不要な部屋の暖冷房はカットするのが一般的ですね。そのため、暖冷房をかけていない部屋(リビング以外)は夏は暑く、冬は寒い為、必要のないときには足が遠のきます。結果として、夏冬は家の面積のうち半分程度しか利用されなくなる。つまり実質坪単価は2倍になります(名目坪単価50万なら実質坪単価100万となる)。しかも外壁面が多いのに外壁の耐久性を下げてしまったのでメンテナンスコストもかさむ・・・。こういった住宅を山の様に見てきました。

そして春・秋は使えるのかと思いきや、こういった家では夏・冬の間利用されなかった居室は、寝室以外は物置と化すため、春・秋になってもやはり物置となってしまっています。

こういった現象を防ぐには、一年を通して居室間で温度差が生じない家づくりが必要不可欠。これを低燃費で実現するには、断熱性能の強化以外に方法はありません。勿論断熱せずとも全館空調システムを導入すれば実現できますが・・・。さて、あなたは家じゅうのエアコンのスイッチを付けっぱなしにして、電気代の請求書を受け取る勇気はありますか?(今の3倍、いや4倍以上いくかもしれませんよ)

「図面上の大きさにこだわるよりも、一年間を通して使える正味の空間のサイズで考える。」

これが低燃費住宅の基本設計のひとつです。

 

seigen

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株式会社アールデザイン代表取締役。株式会社明和地所代表取締役。日本エネルギーパス協会代表理事。不動産仲介業を行う中で、築年数で価値が決まってしまう日本の建物評価制度に疑問を持ち、世界基準のサスティナブル建築・省エネ住宅をつくるために、2011年から「低燃費住宅」を全国展開。国土交通省不動産市場流通活性化フォーラム委員、住宅のエネルギー性能の表示のあり方に関する研究会委員を歴任。現在長野県環境審議会地球温暖化対策専門委員を務める。