我が家には、87歳のおばあちゃんがいます。
陽当たりの良いリビングのソファに深く腰掛けて、のんびりと一日を過ごしています。
私がフローリングにペタンと座り、本を読んでいると、斜め後ろから寝息が聞こえてきます。
振り向くと、両手で持った湯飲みのお茶をこぼしそうになりながらコックリコックリしています。
そして、暫くすると、何事もなかったかのように、再びおしゃべりを始めます。
「今、寝てたでしょ?」
と聞くと、
「目をつぶっていただけ・・・」
と答えます。
そんな母は、窓の外を眺めるのが好きです。
180cm四方の木製フレームに囲まれた風景を日がな一日見ています。
そんな時、私は、
「春の海 ひねもすのたり のたりかな・・・」
与謝蕪村の句を思い出します。
「〇〇さんの青い車に桜の花びらがいっぱい着いていて綺麗だねぇ」
「山桜桃梅と桃の花はいつのまにか終わっちゃったねぇ」
「白っぽいのはヤマザクラで、ピンクのはソメイヨシノだったよねぇ」
「八重桜は少し遅れて咲くんだねぇ」
私の草花好きは、きっと母の影響なのでしょう。
そんな母を見ていると、私は中学生の頃の国語の先生を思い出します。
世界的に有名なファッションデザイナー森英恵と同級生だったというのが自慢のおばあちゃん先生で、毎日毎日「天声人語」を書き写したノートを提出させられました。
おばあちゃん先生と言っても、私が中学を卒業した後に定年を迎えたので、現在の私と同じ位の年齢だったのだと思います。
その先生が、こんな事を言っていました。
「人は、一生のうちに80人の師に出逢う」
その時は、ピンとこなかったのですが、最近わかるようになって来ました。
この世に産声を上げてから現在までに出逢ってきた先生方を思い出してみます。
産婦人科の先生、幼稚園の先生、絵画教室の先生、バレーボールクラブの先生、陸上クラブの先生、小・中・高等学校12年間に教えて頂いた先生、バレーボール部の顧問の先生、野球部の監督、軽音楽部の先輩方、レタリングの先生、ヨガの先生、ピラティスの先生・・・。
両手を使って数えてみたら40人位いました。
まだまだ半分しかいません。これからあと30年生きるとして、あと40人の師に出逢えるのでしょうか?
もし、そうだとしたらとっても楽しみです。
そんな私ですが、最近テレワークができるようになって、新しい師に出逢いました。
PCの事やネットワークがつながらない時、若い人達が助けてくれます。
こんな時期なので、できるだけ人に会わないようにしていますが、若い先生方はSNSを通して丁寧に教えてくれます。
おかげ様で、お家にいながらサクサクと仕事ができるようになりました。
お家にいても先生に教えてもらう事ができる、そんな時代になりました。
これからもたくさんの若くて素敵な先生に出逢えるような気がしています。
今はただ、
南西向きの陽当りの良いリビングルームで、
オーク材無垢フローリングにペタンと座り、
私の人生で一番最初に出逢った師と共に
ひねもすのたり のたりかな・・・。
最後まで読んで下さいまして、ありがとうございました。